2006年10月23日
こころとからだ(2)−「環境−体調−気分−情動−思考」
あまりに強い身体反応のために、私たちの思考が判断ミスを犯す典型的な現象は「パニック障害」です。命が危ない、自分を保持できないという間違った信号が発せられ、そのような身体・情動反応がおきるので、本人はなぜだか分からないまま、「自分は〜してはいけない、〜できないんだ」という錯覚に陥ります。そして時間とともにその思考が確信にかわり、身体をより過敏にさせて、ますます身体を反応が起き易い状態になるという悪循環にはまります。身体反応・情動反応の他に、もっとだまされ易いのが「気分」です。これは女性の方が身近に感じるでしょう。月経周期によって気分が大きく変動し、憂鬱になったり起こりっぽくなったり、あるいは元々ある症状が悪化したりします。人によって波の起こり方は差がありますが、周期のある段階になったときに、嘘のようにそれまでの苛立ちや憂鬱感が軽減します。場合によってはすっかりなくなります。すぎてしまうと、「あれは生理によるものだったんだ」と分かりますが、その渦中にあるときは、本当に問題があるように感じるわけです。それ以外でも、ひどく忙しくて心に余裕がなかったり、疲れていたりすると、思考内容が非常にネガティブになるものです。それも、疲れが取れて気分が回復したあと、あーやっぱり疲れていたんだなと分かるわけです。気分によって思考内容も変わってしまうのです。
そして、気分なる物は体調に大いに影響されるわけです。例えば、前述した月経によるホルモン変化、疲労、睡眠不足、あるいは高熱や痛みなど身体的異常によって、気分はあがったり下がったりします。それを図に表すと図1の様な関係があるわけです。そういった人間の体の性能、限界を分かっていれば、簡単に思考内容に振り回されることなく、「今日はどうも悪い考えばかり出てくるから調子が悪いらしい。早めに寝てしっかり体を休めよう」という配慮ができるわけです。現実的で深刻な問題でなければ、よく寝て体調がよくなると、次の日には気分が変わって「あー、あのときは何であんなことを考えていたのだろう。よほど疲れていたんだな。まーこんなこと考えてもしょうがないからまあ、様子を見よう」という変化が起こるわけです。それと忘れてはいけないのは、体調の前には、環境があることです。天気が悪いだけで憂鬱になり、からっと晴れると何かしら気分が浮かれたりします、もちろん人によって雨の方が好きという人もいますが。天気、季節、気圧、気温、湿度などなど、自分ではどうしようもないこと、なかなかそれが自分の内部にまで影響しているとは思えないことも思考には影響しているのです。
あまりにも思考重視の風潮があるので、「思考ははかない物、簡単に移ろいゆく物、気分−体調−環境などに簡単に影響されるもの」であることを知ってもらいたいです。そして、自分が自分で確信を持って築き上げてしまった堅い思考内容も、それほど強固な物ではなく、客観的に見直してみる価値があるし、やりよ うによっては変えていけることを理解しましょう。
これまで書いたことは、病的ではない場合についてです。これが思考障害、気分障害、情動障害など、症状という話になるともうちょっと話は複雑になりますが、その場合、より慎重で持続的な工夫が必要だというだけで、基本は同じです。しかし、症状が自分を振り回す力が強いので、薬の力を借りることや、きめ細かな対策が必要になります。それでも「思考は変容」できることを信じることが大切だと思います。次に疾患と思考について解説します。

